小学生の時、6つ離れた姉のバンド仲間が持ち込んだPOPEYEを良く読んでいた。
歳に不相応な内容の本だったので、おもしろい時もあれば全くつまらない(わからない)こともある。

 その中で今でも忘れられない記事は、「バイクにレトルトカレーをくくりつけて走り、見晴らしの良い野原か川辺で食べる」という話しだった。
 なんかオトナの世界だなぁ〜・・・・と当時のどつ少年は思っていたのだね。

 そんな話しを最近思い出した。
そして、「いつかやってみたい」と悶々としつつもなかなかやりだせないでいたのだった。

 理由は簡単で、

・バイク持ってない

 これだけだったのだが、まてよ、俺にはマイクロカーがあるではないか!と思い立ち、マイクロカーでカレーを作るという壮大な計画が始まったのだった。



 記憶が正しければ、あの記事ではレトルトカレーをバイクのラジエーターか、マフラーかなにかに針金でくくりつけて、食堂でご飯を分けてもらい、バイクを走らせてその熱でカレーを調理していた。

 通常のレトルトカレーは、3分から5分間ほどお湯で温めるか、レンジで2分間加熱しなければならない。
レンジの場合、マイクロウェーブによって素材の内側から素材の水分を振動させて発熱させ加熱調理を行う。
 しかし、K-3の場合、マイクロウェーブを照射する機能が無いので、あの小説の通りに車体の発熱する部分にくくりつけないといけないのだ。

 ここで問題になるのは、レトルトカレーの大きさ。
発熱箇所の温度がクリアになってもカレーが入らないのではダメなのである。
 しかし、カレーの大きさをどうやって調べればいいのだ・・・。買ってくれば早いけど、、、、

 ここで、役立つのがなぜか「アマゾン」
アマゾンってレトルトカレーまで売っているのだ。すごいというか節操無いというか(汗

 アマゾンにかかるとレトルトカレーですら、
・原産国
・原材料
・栄養成分
・内容量
・サイズ

これらの情報がすべて判るのである。

ちなみにボンカレーの場合、アマゾンで調べてみると・・・・

【仕様】

「フタを開け箱ごと電子レンジで2分」従来の湯煎調理に加え、新たにレンジ調理の選択肢を広げたレトルトカレーです。
原産国 : 日本
原材料 : 野菜・果実(たまねぎ・じゃがいも[非遺伝子組換え]・にんじん・トマト・ぶどう・りんご)、牛肉、食用油脂、小麦粉、肉エキス(ビーフ・チキン)、でんぷん、カレー粉、砂糖、食塩、乳加工品、香辛料、バター、赤ワイン、フルーツチャツネ、ウスターソース、ぶどう糖、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、香料、パプリカ色素、リンゴ抽出物、(原材料の一部に大豆、豚肉を含む)
栄養成分 : 1人分(220g)あたり/エネルギー189kcal、たんぱく質6.2g、脂質7.9g、炭水化物23.3g、ナトリウム1.1g(食塩相当量2.8g)
内容量 : 220g(1袋)
サイズ : 170×130×25mm

 こんな感じですべて判ってしまうのである。登録している人、ご苦労さまです。

 これによるとレトルトカレーのサイズは170×130×25mmであるらしい。
このサイズを段ボールで切り、それを受ける皿の部分をアルミで作ることにした。
 アルミにしたのは錆びなくて熱伝導性が良いことと、加工のしやすさ、そしてなんといっても幌計画で買った残りが余っていたからであった。



 段ボールでレトルトカレーの大きさのモデルを作り、適当なサイズの受け皿を作ることにした。
 ガレージの壁に掛かっている長らく使っていなかったジグソーを引っ張りだし、切り取る場所をテープでマーキングしてガガガガっと切っていく。


こんな感じに切れました。いびつなのはご愛敬。


 さて、こんどはこの受け皿をどこに搭載させるか?なのだが、実はすでに思いついてたのだ。
それはここ!!



 耐熱ペイントを塗ろうと思ったら、途中でなくなっちゃってすごいサイケデリックな感じになってしまっているが、前期型ノーマルマフラー改、通称「静音(しずね)ちゃん」である。

 ここのM型のコブを見たときから何となくひらめいていたのだよね。

 結局エンジンで一番温度の高い場所はエキパイなのだけど、ここに物を置くのは不可能。
クーリングファンカバーの上は温度計で温度を測定すると50℃程度しか発熱させられない。
場合によっては70℃にもなるのだが、それは走行して放置した場合だけ。
 通常はクーリングファンからガンガン空気が送られてくるのでめちゃくちゃ高温にはならないのだ。

 また、熱を調理に使うからには素材の温度以上に上がってくれる場所でなければならない。
クーリングファンカバーの上ではおでんすら温められないのである。

 しかし、マフラーならば話は別なのだ。
とにかく下手すれば200℃近く上がるかもしれない。
 手持ちの電子温度計では100℃しか測定出来ないので、実際に計ってみるとすぐに測定不能になってしまった。

 M型のコブといい、空間といい、もう、ここしか場所は無いのであった。

 でもって、先ほど切ったアルミ板をM型のコブに載せてみると・・・・・・なんか思いっきりガタついている(汗
これでは走行時にけたたましくアルミ板がマフラーにぶち当たる音が響いてトンデモない事になってしまう。
 せっかくの静音ちゃんなのにさっ!

 それに、「バイク&カレー」でググって調べた時に、「やってみたらカレーが破裂してバイクのカウルの中がカレーまみれなった」とかいう武勇伝を見つけることが出来た。
 これは密閉されたレトルトカレーに高熱をかけて沸騰させてしまったどうなるか?ということを想像すればドンだけ危険が判るであろう。
 特に粘性の高い液体は対流が行われにくくて、局所的に沸騰し爆発することがある。
 冬場、みそ汁が爆発する事故が相次いだことがあったが、それはこれが原因なのだ。

 となれば、めちゃくちゃ高熱になる場所にカレーをくくりつけるなどというのは言語道断なのである。

これは困った、、、せっかく場所を見つけたのに・・・。

しかし、それには秘策があったのだ。

 熱を直接カレーに当てるから危険なのだ。
だったら間接的に伝導してやればいい。
 たとえばカラスクロスや、キッチンペーパーなどの熱伝導率の悪い素材で耐熱性の高いものを使ってあげれば、局所的な高温をさけることが出来るし、その素材自体がクッションの役目をしてアルミ板とマフラーのがたつきを取り除いてくれるはず。

 早速、ホームセンターに行き、ガラスクロスを探すものの見つからず、、、
キッチンペーパーも例として出したが実用性的に問題ありなので却下。

 う〜ん、、、いい素材が無いぞ、、、

悩みつつ台所用品売り場を徘徊していて見つけたのがこれだ!



 じゃーん!スチールたわしなのだ!!
しかも、これはステンレスで錆びない。
 でもってクッション性は抜群なのである。
これ以外に耐熱性と熱伝導性とクッション性を持った素材は無いだろう。
 通常の鉄ならば安いのがたくさんあったのだが、ステンレスにこだわったら385円もしました(汗

ともあれ、これで計画が一歩前進したのである。うはは。





 アルミの受け皿のパーツにマフラー固定用の穴をあける。
こういったものは昔から4カ所と決まっているのだ。



 さっそくレトルトカレーを乗せてみる。
選んだカレーは「なっとくのカレー 〜野菜が決め手の旨みとコク〜 辛口」なのだ。
 メーカーはS&B。カレー粉ではメジャーだね。

 まったくもって余裕のある状態でカレーを乗せることが出来た。やったね!
事前調査のタマモノなのですよ。



 穴をさらに4カ所追加。
外側の穴は素材固定用の穴になる。
 行き当たりばったりで作っているので、これがどんな感じになるのかは本人も想像が付かない。



ツバメの巣ではない。
これが静音ちゃんにスチールたわしを乗せた状態の画像である。
このモシャモシャがいい味を出して・・・・・くれるはず。



 アルミの受け皿を乗せて針金で固定した状態。
 こんな華奢な固定方法で問題ないのかは不明である。
実際にはステンレスバンドなどで固定できればいいんだけどねぇ・・・・・。

 なにげなーく撮しているけど、この写真はマフラーが「調理器具」に生まれ変わった瞬間なのだ!
すごいなぁ(笑



 「テンチョー!なっとくのカレー入ります〜」

 そんな感じでレトルトカレーをインストールなのだ。



 こんな感じで収まりました!
 これであとはひたすら走って、カレーが出来るのかをやってみればいいんですよ。

・・・・・・・・・・・しかし、何かが違う気がする。

いや、マイクロカーでカレーを作るという行為が変だと言っているわけではない。

片岡義男があの小説を書いたのは1980年代ごろ。
今は2008年なのだ。21世紀なのだ。

 時代は生き物である。当然進化しているのだ。単なる考証の作業であるならばオリジナルに忠実にと考えるのだけれど、マイクロカーを使って今チャレンジするのであれば、これも行っておいたほうが良いだろう。



 というわけで「さとうのご飯 (銀シャリ)」はいりまーす♪

 しかし、このご飯がくせ者なのだ。
時代が進化したとはいえ、リゾットなどと違って白飯は汁気ゼロ。
通常なら汁を媒体として熱を伝導させて加熱調理出来るレトルト系に於いてまったく異端な存在なのである。
 おかげで加熱調理時間も15分以上と気が遠くなるくらいの時間が必要になるのだ。

 全体をお湯で温める場合、熱は四方八方からくるがこの場合、下からしかこない。
しかもレトルトカレー経由である。
 果たして大丈夫なのか・・・・。

 これらの素材の固定も針金で行った。
こんだけの太さがあるとレトルト素材の質量ではいくら振動を与えても針金はビクともしない。
また、レトルトだけにそっちが変形してくれるので針金はへっちゃらなのだ。・・・・と思う。
 こればっかりは走ってみないと判らないねぇ(汗



 あとはひたすらK-3で走るだけ。
しかし、ネットで調べた限りでは「やってみたけどなんかヌルイのが出来た」という報告もあった。

 甘いね、みんな。

 ちゃんと素材の温度を確かめながら走らないとね。
海原遊三も、「食い物には旨い温度があるのだ。」と言ってたくらいなのだ。
当然、リアルタイムで素材の温度を測りながら温めないといけないではないか。

 ということで、レトルトカレーとご飯の間に温度センサーを挟み込み、温度をチェックしつつ走ってみたのだった。


・開始温度は25.5℃


 ここから走って温度を上げていく。がんばるぞ〜!



 走行開始から17分後。
ようやく40℃を超えてくれた。走りながらもいつ沸騰して爆発しないかとヒヤヒヤなのだ。



 21分後に45℃突破。
気のせいか100m走るたびに0.1℃づつ上がっている気がする。気のせいだね(汗



 53分後にようやく65℃突破。

こりゃー、絶対爆発なんてしないな(汗

 しかし、1時間近く走って40℃しか上昇していないのか、、、、ものすごい効率の悪い調理法なのではないかという野暮なことを考えちゃいけないのね、、、



 1時間3分後にようやく70℃超え。
でんぷんがアルファ化するのは60℃〜70℃なのだけど、この位の温度でも時間をかければ沸騰したお湯で調理したのと同じ効果になるものと信じたい。

 この後、ダイソーに行ってカレー用の皿を買った。
買い物をしている間もどんどん調理されているのもこのシステムの良いところ(笑

 次にトンカツを買いに行く。
行ったのは「宮木精肉店」



 かなりな老舗であった。実は初めて買いにきたのだ。
腰が90度曲がって直滑降状態のおばーちゃんが相手をしてくれる。
あいにくトンカツが品切れだったのでその場で揚げてもらった。逆にラッキー♪



 トンカツを揚げている間、ひたすらカレーとご飯を加熱調理しているK-3。
がんばってくれたまえww



数分待って熱々なトンカツができあがりました〜♪
すでにこの匂いだけでご飯3杯はイケます。





 ガレージに戻り、エンジンメンテナンスハッチを開けてまずはご飯を取り出す。
なんか熱々でいい感じであった。



焦げたのか袋はなぜか所々銀色になっていた。



 さて、カウンターに手狭に並んだ主役たちであります。
カレーは文句ないくらい熱々。
ご飯も「イケていそうな」感じの熱々。
トンカツはちょっと冷めちゃった(汗

 ダイソーで買った割れないメラミン製の皿を洗って準備万端なのであります。



 でもって盛りつけ〜♪


 はーい出来ました!!!
トンカツ以外は全部K-3で調理したカレーなのであります。
 もちろん、全部おいしくいただけました。

 今回の実験で、移動している間もず〜〜〜〜〜っと加熱調理をK-3がやってくれるので現地に着いた時には熱々のカレーや、親子丼、鰻丼といったレトルト物が楽しめることが実証できました。

 マイクロカーは走りながら調理も出来るスグレモノなんですねぇ〜ww

すごいっす♪


でもって、どのくらいの距離を走ったのかというと・・・・・。

53km!!

 うーむ、、、温かいカレーを食いたいなと思ったら半径50km以上走った場所に行って喰わないといけないのである。
 むひょ〜〜〜っっ(汗